アンティークコイン 1557-B年 フランス アンリ2世 1アンリドール金貨 PCGS-AU53

ゴールドコイン

アンティークコイン 1557-B年 フランス アンリ2世 1アンリドール金貨 PCGS-AU53

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発行年:1557年

発行国:フランス(ルーアン造幣)、ミントマークB

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑定機関:PCGS(Professional Coin Grading Service)社、鑑定枚数1枚

グレード:AU53トップグレード

 

 

 

 

 

 

 

 

重量:3.59グラム

直径:25.0ミリ

品位:95.80%金


■ 歴史的背景

 

 

 

 

アンリ・ドール金貨は、アンリ2世の治世中に発行された主要な金貨の一つです 。

 

 

 

 

 

 

 

 

この貨幣は、その美的価値だけでなく、当時のフランス王国の経済的・政治的状況を反映する重要な歴史的資料としても機能しています。  


■ 意匠の魅力

 

 

 

 

表面:銘文はラテン語で “HENRICVS.II.D.G.FRANCO.REX.”  、「アンリ2世、神の恩寵によりフランク王」 。  


右向きの甲冑をまとったアンリ2世の胸像が描かれている 。

甲冑にはダマスク模様が施されている場合があり、これは国王の威厳と富を象徴する要素である 。


裏面:銘文は “DVM.TOTVM.COMPLEAT.ORBEM.1557.”  、「彼が全世界を満たすまで」

 

 

 

 

この銘文は、アンリ2世の普遍的な支配への野心を象徴している 。


4つの冠を戴いた「H」の文字が十字を形成し、その角に2つの三日月と2つのフルール・ド・リス(ユリの紋章)が配置されている 。

 

 

 

 

十字の中心には造幣局の記号(ミントマーク)Bが刻まれる 。


■ Gold Coins of the Worldによる評価額

VF:3,000ドル

EF:5,000ドル

※評価額は長年更新されておらず、現在は上昇している可能性が高いです。


■ 激動の時代を映す金貨

 

 

 

 

アンリ2世の治世は、フランスにとって激動の時代でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

父王フランソワ1世の遺産を受け継ぎながらも、彼は財政的な逼迫、宗教的分裂の激化、そしてハプスブルク家との絶え間ない戦争という困難に直面していました 。

 

 

 

 

 

 

 

 

1556年には大規模な不作に見舞われ、アメリカ大陸からの貴金属流入によるインフレが国民経済と王室財政を圧迫しました 。

 

 

 

 

 

 

 

 

王室の債務は年間収入の約2.5倍にまで膨れ上がっていたのです 。  


このような厳しい経済状況下において、貨幣は単なる交換手段以上の意味を持っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは王権の象徴であり、国家の安定を保つための重要な「権力の技術」と見なされていたのです 。

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ2世は、貨幣の統制を国家建設の最優先事項とし、造幣システムに対する行政管理を中央集権化・強化しようと試みました 。

 

 

 

 

 

 

 

 

貨幣の品位を高く維持すること(アンリ・ドール金貨は.958という高純度を誇ります )は、王室の信用を保ち、国家の安定を図るための重要な戦略でした 。  


このアンリ・ドール金貨は、まさにその時代の野心と課題を凝縮したものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

貨幣の裏面に刻まれたラテン語の銘文「DVM TOTVM COMPLEAT ORBEM」(彼が全世界を満たすまで)は 、国内の困難にもかかわらず、普遍的な支配を目指したアンリ2世の壮大な野望を雄弁に物語っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

この金貨を手にすることは、フランスがルネサンス文化を謳歌しつつも、やがて宗教戦争へと突入する転換点に立っていた時代の息吹を直接感じることと同義なのです 。  


■ 至高の芸術と精緻な技術

 

 

 

 

アンリ・ドール金貨の第1型は、その歴史的背景だけでなく、貨幣としての美的価値と技術的特徴においても、コレクターを魅了してやみません。


・威厳に満ちたデザイン

 

 

 

 

金貨のオモテ面には、右向きの甲冑をまとったアンリ2世の胸像が精緻に描かれています 。

 

 

 

 

 

 

 

 

甲冑にはダマスク模様が施されている場合もあり、これは国王の威厳と富を象徴する細部へのこだわりを示しています 。

 

 

 

 

 

 

 

 

銘文「HENRICVS.II.D.G.FRANCO.REX.」(アンリ2世、神の恩寵によりフランク王)は 、当時の君主の絶対的な権力を明確に示しています。  


ウラ面には、4つの冠を戴いた「H」の文字が十字を形成し、その角には2つの三日月と2つのフルール・ド・リス(ユリの紋章)が配置されています 。

 

 

 

 

 

 

 

 

十字の中心には、この金貨が鋳造された造幣局を示すミントマークが刻まれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する金貨は、ルーアン造幣局を示す「B」のマークが特徴です 。

 

 

 

 

 

 

 

 

この複雑で象徴的なデザインは、当時の貨幣芸術の粋を集めたものであり、王室の権威と信仰の融合を表現しています。  


・確かな品質と歴史を物語る製造技術

 

 

 

 

アンリ・ドール金貨は、.958(95.8%)という非常に高い純度の金で鋳造されています 。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、当時の金貨としては最高水準の品位であり、王室が貨幣の信頼性を重視していた証拠です。

 

 

 

 

 

 

 

 

標準重量は3.63グラムとされていますが 、手作業による「槌打鋳造(Hammered)」という製造技術のため、個体ごとにわずかな重量や直径の差異が見られます 。  

 

 

 

 

 

 

 

 

この槌打鋳造という伝統的な手法は、現代の機械打ち貨幣とは異なり、一枚一枚に職人の手仕事の痕跡が残ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのため、一部の個体には「打刻の弱さ」が見られることもありますが 、これは欠陥ではなく、むしろそのコインが辿ってきた歴史と、当時の技術的限界を物語る貴重な特徴として、真のコレクターからは高く評価されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

このような手作業による不均一性こそが、各コインに唯一無二の個性を与え、その魅力を一層引き立てるのです。  


■ 稀少性と投資価値:なぜ今、アンリ・ドールなのか

 

 

 

 

アンリ・ドール金貨、特に第1型は、貨幣市場において「非常に稀少なタイプ」と評価されています 。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界的な貨幣データベースであるNumistaでは、単一のアンリ・ドール金貨に最高レベルの稀少性指数「100」を付与しており 、これはその入手が極めて困難であることを示しています。  


・稀少性の背景

 

 

 

 

この金貨がこれほどまでに稀少であるのには、いくつかの歴史的要因があります。

 

 

 

 

1.高額な額面と溶解の圧力: 金貨は当時非常に価値が高く、財政的に逼迫した時代には、しばしば再鋳造されたり、地金として溶解されたりしました 。

 

 

 

 

アンリ2世の治世はまさにそのような財政的ストレスに満ちており 、多くの金貨がその運命を辿ったと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2.宗教戦争の影響: アンリ2世の死後、フランスは長期にわたる宗教戦争(ユグノー戦争)に突入します 。

 

 

 

 

戦乱は貨幣のさらなる破壊や、安全な場所への退蔵を促し、現存する個体の数を一層減少させました。  

 

 

 

 

 

 

 

 

3.限られた鋳造量: 例えば、1557年モンペリエ造幣局で鋳造されたアンリ・ドール金貨の推定鋳造量はわずか1,400枚とされており、これは全国的な発行量としては極めて少ない数字です 。

 

 

 

 

ルーアン造幣局での鋳造量も同様に限定的であったと推測されます。  

 

 

 

 

 

 

 

 

これらの要因が複合的に作用し、アンリ・ドール金貨は現代において極めて稀少な存在となっているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に、ラ・ロシェル造幣局で鋳造された1557年のアンリ・ドール金貨の中には、銘文に「ORBEM」とすべきところが「ROBEM」と誤刻された「ユニーク」な個体も存在し 、鋳造時のわずかな異常が貨幣の価値を飛躍的に高める可能性を示しています。  


■ ルーアン造幣局:歴史を刻む刻印「B」

 

 

 

 

今回紹介しているアンリ・ドール金貨は、ミントマーク「B」で識別されるルーアン造幣局で鋳造されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーアンは、少なくとも13世紀から19世紀まで何世紀にもわたって活動していた、フランスにおける極めて重要な造幣の中心地でした 。  


・重要な生産拠点としての役割

 

 

 

 

ルーアン造幣局は、アンリ・ドール金貨やダブル・アンリ・ドール金貨のような金貨だけでなく 、テストン銀貨 やビロン貨のドゥーザン など、多種多様な貨幣を生産していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス全土に多数の造幣局が分散して存在していた中で 、ルーアンは常に主要な生産拠点の一つであり続けました。  

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ2世は、1549年に一時的にすべての造幣局を閉鎖した後、1551年半ばまでに順次再開させ、すべての貨幣に鋳造年を表示する新規則を導入しました 。

これは、王室が貨幣鋳造に対する統制を強化し、生産を追跡し、品質を監視しようとした明確な意図を示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーアン製のアンリ・ドール金貨に見られるミントマーク「B」は、この中央集権化された管理システムの一部であり、そのコインが特定の地域と造幣局で、正確な時期に鋳造されたことを証明する重要な手がかりとなります。  


・技術革新の時代

 

 

 

 

アンリ2世の治世は、貨幣鋳造技術の過渡期でもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの貨幣は伝統的な槌打鋳造でしたが 、治世の後半には「スクリュープレスで製造された機械打ち貨幣」も登場し始めました 。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、貨幣の品質と一貫性を向上させ、偽造を抑制するための重要な技術的進歩でした 。  

 

 

 

 

 

 

 

 

1557年のルーアン製アンリ・ドール金貨はおそらく槌打鋳造であったと考えられますが、この技術的背景は、当時の貨幣生産が直面していた課題と、それに対する王室の継続的な努力を浮き彫りにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーアン造幣局で鋳造されたこの金貨は、単なる貨幣としてだけでなく、ルネサンス期のフランスにおける技術と行政の進化を象徴する存在でもあるのです。


■ 総評

 

 

 

 

1557年にルーアン造幣局で鋳造されたアンリ・ドール金貨は、歴史、芸術、そして投資価値が完璧に融合した稀有な存在です。

 

 

 

 

 

 

 

 

この金貨は、アンリ2世の治世という激動の時代を生き抜き、フランス王室の権威と野望、そして当時の経済的・社会的現実を物語る貴重な証人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

その精緻なデザイン、高純度の金組成、そして手作業による槌打鋳造の痕跡は、一枚一枚に独自の物語と個性を与えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして何よりも、その極めて高い稀少性と、現代の貨幣市場における驚異的な価値上昇は、この金貨が単なるコレクターズアイテムに留まらない、確かな投資対象としての魅力を備えていることを示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史的な金貨への需要が高まる中、アンリ・ドール金貨のような稀少で状態の良い標本は、今後もその価値を高めていく可能性を秘めています。

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