アンティークコイン 1711/0S年 スペイン フェリペ5世 8エスクード金貨 NGC-AU55
発行年:1711/0S年
発行国:スペイン(セビリア造幣)
鑑定機関:NGC(Numismatic Guaranty Corporation)社、鑑定枚数5枚
グレード:AU55(トップ1グレード)
重量:26.78グラム
直径:37.5ミリ
品位:91.67%金
■ 歴史的背景と発行の意義
スペイン・ブルボン朝の初代国王フェリペ5世(在位1700~1746年)は、フランス・ルイ14世の孫にあたり、スペイン継承戦争の末に即位した人物です。
この金貨は、彼の治世初期、1711年にセビリア造幣局で鋳造された「8エスクード金貨」。
このシリーズは“ダブロン”とも呼ばれ、大航海時代の富と威信を象徴する通貨でした。
スペイン帝国の財力と植民地ネットワークの拡大を象徴する貨幣として、ヨーロッパ中で流通し、影響力を及ぼしました。
■ 意匠の魅力
表面:PHILIPPVS V DEI GRATIA(フィリップ5世 神の恩寵による王)
中央には、王家の紋章(エスカッシャン)が堂々と描かれ、その上に大きく立派な王冠(クラウン)が配されています。
さらに、その紋章を取り囲むように金羊毛騎士団(Toison d’Or/トワゾン・ドール)の首飾りが描かれており、王権と栄誉の象徴となっています。
この面は、王の威信と正統性を強く示すデザインで、当時の絶対王政の精神を反映しています。
裏面:HISPANIARUM REX(スペイン王)と日付「1711」
※年号は「1711」ですが、元の刻印「1710」を修正した「1711/0」というオーバーデート(改刻年号)です。
中央にはパッティー型十字(Cross Pattée)が描かれています。
これは、先端が広がった装飾的な十字で、宗教的権威とスペイン王家の神聖性を象徴しています。
この十字は、四葉型(クアドリローブ)の装飾に囲まれ、その角には以下の記号が配置されています。
・2時と8時位置:数字「8」(8エスクード=8ダブロンの額面)
・11時位置:造幣所記号「S」(セビリア造幣局)
・5時位置:鋳造責任者(試金者)の頭文字と思われる刻印
さらに、逆向きに彫られた「S」(裏面の造幣所記号)が確認されるのも、本品のユニークな特徴です。
■ Gold Coins of the Worldによる評価額
VF:4500ドル
EF:7500ドル
※評価額は長年更新されておらず、現在は上昇している可能性が高いです。
■ コインの特徴
年号修正(1711/0):これは1710年の金型を修正して翌年も流用したことを示す“オーバーデート”で、収集家から高く評価される重要な特徴です。
鋳造所記号「S」および逆向きの「S」:セビリア鋳造所を表す“S”が裏面に逆さまに刻まれており、当時の技術的背景と手作業による製造工程の痕跡を伝える興味深いディテールです。
表面意匠:表面には王家の紋章が、裏面にはスペイン王国の権威を示す十字架文様が堂々と刻まれています。
十字架を囲む四葉型の意匠は美術的にも高く評価されています。
■ 状態とグレーディング
・NGC AU55(8237547-016)、“Top Pop(同率1位)”
現在、NGC(Numismatic Guaranty Company)において本品と同グレード以上の個体は存在せず、“トップ・ポピュレーション”とされています。
・状態詳細
1.わずかな摩耗による均一なサーフェス。
2.鋳造時の縁周りの不規則さはあるものの、デザインの中心はしっかり残存。
3.エッジには過去の装着痕(ジュエリー用途の可能性)がありますが、全体として均整が取れた美しい印象。
4.黄金色の自然なトーンと柔らかな輝きが、長い時を経た威厳を伝えている。
■ 投資・収集価値
・王家の威信を伝える重量級金貨(26.78g)として、資産価値・歴史的価値の双方を備えた逸品です。
・年号修正と逆Sという特徴により、コレクターズアイテムとしての価値は非常に高く、次回市場に出る保証はありません。
・スペイン王室コインとしての美術的完成度、歴史的重み、そして「Top Pop」グレードの希少性が三位一体となった逸品です。
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