アンティークコイン ドイツ 自由都市フランクフルト 1639年 1ダカット金貨 NGC-MS63
重量:3.50グラム
直径:23.0ミリ
品位:98.6%金
NGC社鑑定済み枚数10枚 MS63は2枚でトップ2グレードです。

表側には、フランクフルトの象徴である「帝国鷲(Imperial Eagle)」が描かれている。
この鷲は楕円形の盾の中に配置され、盾の上部には鋳造年である1639年が刻印されている。
フランクフルトは1372年以来、皇帝に直属する「自由帝国都市(Freie Reichsstadt)」であり、地元の諸侯や貴族の支配を受けない特権を享受していた。
帝国鷲の紋章は、この特権の源泉が神聖ローマ皇帝にあることを示すと同時に、都市の主権を主張するものであった。
また、表側の碑文には「NOMEN:DOMINI:TVRRIS:FORTISSIMA」というラテン語が刻まれている。
これは旧約聖書の「箴言18章10節」から引用された一節であり、「主の名は堅固な塔である」という意味を持つ。
三十年戦争という絶え間ない暴力と略奪の時代において、都市の防壁だけでは安心を得られなかった市民にとって、宗教的な庇護を貨幣に刻むことは、経済的な信用と精神的な安寧を同時に保証する象徴的行為であった。
このことから、このタイプは一部の収集家の間で「ストーム・デュカット(Storm-ducat)」や「タワー・デュカット(Tower-ducat)」とも呼ばれている。


裏側は、装飾的なフレーム(カルトゥーシュ)の中に5行にわたる碑文が配置されている 。
碑文の内容は「DVCATVS NOVVS: REIPVBL. FRANCO FVRT:」であり、「フランクフルト共和国の新しいダカット金貨」と直訳される。
ここで「REIPUBLICA(共和国)」という用語が使用されている点は重要である。
これは、フランクフルトが世襲の君主によってではなく、都市貴族やギルド代表からなる市参事会によって統治されていた自負を表している。
・フランクフルトのダカット金貨
フランクフルトのダカット金貨は、神聖ローマ帝国の厳格な鋳造規定に従って製造された。
当時のヨーロッパにおいて、ダカットは国際交易の標準通貨としての地位を確立しており、その信頼性は重量と純度の永続的な維持に依存していた。
三十年戦争中、都市は通過する軍隊や占領軍に対して多額の「貢献金(Kriegssteuer)」を支払うことを強要された。
都市経済への抽出額は帝国全体の戦費調達額の5倍以上に達していたとされる。
フランクフルトのような富裕な交易都市は、略奪を免れるための「身代金」として、また傭兵への給与支払い手段として、高純度の金貨を鋳造し続ける必要があった。
傭兵や高級将校は、価値が不安定な銀貨(当時は「キッパー・ヴィッパー」と呼ばれる悪貨鋳造期の影響が残っていた)よりも、確実な価値を持つ金貨での支払いを要求した。
1639年銘のデュカットが鋳造された背景には、このような軍事財政上の切迫した要請があった。
Gold Coins of the Worldでは
VF 425ドル
EF 950ドル
基準価格は、更新されておらず、実際の相場価格を
大きく下回っています。
1639年銘フランクフルト・ダカット金貨は、一つの金属片の中に「三十年戦争の苦難」「自由都市の誇り」「聖書の知恵」「金融の黎明」を封じ込めたタイムカプセルです。
NGC-MS63という格付けは、単なる数字ではありません。
それは、380年以上前の職人が込めた「主の名は堅固な塔なり」という祈りが、今なおその輝きを失わずに現代に到達したという奇跡の証明です。
この金貨を手にすることは、マイン川のほとりで鳴り響く戦火の遠雷を、静寂の中に聞き取ることと同義です。
経済史、軍事史、そして美術史の交差点に位置するこの1639年デュカットは、貨幣が単なる交換媒体ではなく、文明の持続と価値の不変性を信じようとした人類の意志の現れであることを、現代の私たちに雄弁に語り続けています。



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