【レア度2 R2】アンティークコイン イタリア サヴォイア公国 1601年 カルロ・エマヌエーレ1世 1ダカット金貨 PCGS-AU55
1601年発行
発行枚数不明
PCGS社鑑定済み1枚、AU55は1枚でトップグレードです。
重量:3.43グラム
直径:23.0ミリ
品位:98.6%金
MIR(Alessandro Toffanin著 “Monete Italiane Regionali”)において、1601銘のカルロ・エマヌエーレ1世 1ダカットのレア度は「RR」(Molto Rara:非常に稀少)と評価されています。
表面:聖母子像

表面には、幼子イエスを抱いて座る聖母マリアが描かれています。
この図像は、13世紀から15世紀にかけてのビザンティン様式や初期ルネサンスの影響を受けつつ、バロック初期の人間味あふれる優美さを備えています。
聖母子の描写は、サヴォイア公国がカトリック守護の要であることを示すと同時に、公公一族の個人的な信仰心をも反映しています。
特筆すべきは刻銘の PAX. IN. VIRT. TVA.(汝の徳の中に平和あれ)という文言です。
これは詩編121篇から取られたフレーズであり、1601年のリヨン条約によるフランスとの和平を直接的に祝福する意図がありました。
カルロ・エマヌエーレ1世は、この和平を記念して金貨や銀貨を鋳造し、ヴィコ・ディ・モンドヴィの聖堂への寄進も行っています。
当時の外交使節たちが、信任状と共に金貨が詰まった箱を贈られたという逸話があるように、この「平和」のメッセージを刻んだ金貨は、外交上の象徴的な贈り物としても機能したと考えられます。
しかし、この「徳による平和」という言葉の裏には、軍事力による威嚇と巧妙な外交戦略によってようやく勝ち取った不安定な均衡という、当時の厳しい地政学的現実が隠されています。

裏面:サヴォイア家の紋章とアンヌンツィアータ騎士団の襟飾
裏面には、王冠を戴いたサヴォイア家の盾紋が配置されています。
この紋章は、公国が主張する様々な称号を統合したものであり、中心にはサヴォイア家の象徴である赤地に白十字の盾が配されています。
盾を囲むのは「聖なるアヌンツィアータ騎士団」の襟飾です。
この騎士団は、サヴォイア家の君主が授与する最高位の勲章であり、公国の主権と騎士道的伝統を象徴しています。
周囲の刻銘は C. EMANVEL. D.G. DVX. SAB. であり、これは Carolus Emanuel Dei Gratia Dux Sabaudiae(神の恵みによるサヴォイア公、カルロ・エマヌエーレ)の略称です。
年号「1601」は下部の縁に分割して刻印されています。
この意匠は、君主の世俗的な権威と神聖な権利を強調する定型的な表現です。
基準価格
Gold Coins of the Worldでは
VF 850ドル
EF 1,400ドル
1.サヴォイア公カルロ・エマヌエーレ1世と1601年の歴史的転換点
1601年という年は、サヴォイア公国の歴史において単なる暦の一年ではなく、国家のアイデンティティと戦略的方向性が決定づけられた転換点として記録されています。
この年、カルロ・エマヌエーレ1世(在位1580-1630年)はフランス王アンリ4世との間でリヨン条約を締結しました。
この条約により、公国はアルプス以西の領土(ブレス、ビュジェ、ジェクス)をフランスに割譲する代わりに、イタリア側のサルッツォ侯領を獲得することとなりました。
この領土交換は、サヴォイア家が将来的に「イタリアの君主」としての地位を確立するための布石となり、その政治的野心は造幣される貨幣の意匠にも色濃く反映されることとなります。
カルロ・エマヌエーレ1世は「テスタ・ディ・フオーコ(熱血漢、または火の玉)」の異名を持ち、その軍事的野心と外交的機敏さで知られていました。
彼はフランスの宗教戦争や三十年戦争といった欧州の混乱に乗じ、サヴォイア公国の影響力を北イタリア全域に広めようと試みました。
彼の統治下で発行された金貨は、単なる決済手段ではなく、サヴォイア家が列強と対等な主権国家であることを内外に誇示するための宣伝媒体としての機能を果たしていました。
1601年発行
発行枚数不明
PCGS社鑑定済み1枚、AU55は1枚でトップグレードです。
重量:3.43グラム
直径:23.0ミリ
品位:98.6%金
本金貨は、カルロ・エマヌエーレ1世という野心的な君主の魂と、17世紀初頭の激動する欧州情勢を、わずか3.43グラムの純金の中に凝縮した歴史的遺物です。
リヨン条約による「平和」を標榜し、聖母の加護を祈り、そしてアンヌンツィアータ騎士団の権威を誇示したこの金貨は、貨幣学的な希少性を超えた深い文化的・歴史的意義を内包しています。
PCGS AU-55という優れた保存状態で残されたこの個体は、当時のトリノ造幣局の職人技、すなわちハンマー打刻という困難な手作業が生み出した芸術的な極致を現代に伝えています。
そのラスターの輝きは、リヨン条約によってもたらされたひとときの平和と、その後のイタリア統一へと続くサヴォイア家の長い旅路の始まりを照らし出しているかのようです。
収集家や歴史家にとって、この金貨は単なる投資対象ではなく、サヴォイア公国がアルプスの小国からイタリアの主導国家へと成長していく過程を証言する、かけがえのない一次史料としての地位を確立しています。


コメント