【レア度1 R1】アンティークコイン ハンガリー王国 ヤギェウォ朝 1490-1516年 ウラースロー2世 1グルデン金貨 PCGS-AU55 John P. Burnham Collection
1490-1516年発行(ナジセベン(シビウ)造幣所)
発行枚数:1,058枚
PCGS社鑑定済み1枚、AU55は1枚でトップグレードです。
重量:3.59グラム
直径:21.0ミリ
品位:98.6%金
表面:幼子イエスを抱く聖母マリア
ハンガリーのゴールドグルデンは、表裏の意匠が定型化されていたが、ウラースロー2世期にはヤギェウォ朝のアイデンティティを反映した微細な変更が加えられた。

表面には、幼子イエスを抱く聖母マリアが描かれている。
マリアはハンガリー王国の保護者として崇拝されており、その描写は王権の神聖性を強調する。
注目すべき点は、マリアの下部や周囲に配される紋章である。
ウラースロー2世の金貨には、ハンガリーの縞模様(アールパード家)、二重十字、そしてヤギェウォ家の象徴であるポーランドの鷲やリトアニアの騎士が四分割紋章として刻まれることがある。

裏面:ハンガリーの騎士王、聖ラースロー1世
裏面には、ハンガリーの騎士王、聖ラースロー1世(在位:1077年 – 1095年)の立像が描かれている。
彼は右手に戦斧(ハルバード)、左手に宝珠を保持している。
聖ラースローは中世ハンガリーにおける理想的なキリスト教騎士の象徴であり、オスマン帝国という異教徒の脅威にさらされていた当時のハンガリーにおいて、この意匠は「キリスト教の防波堤」としての自負を示す政治的メッセージでもあった。
「h」マークはこの聖ラースロー像の両脇に配置されており、ナジセベン造幣所による発行であることを保証している。
・ウラースロー2世のナジセベン造幣所製ゴールドグルデンのレア度
一般的に、このウラースロー2世のナジセベン造幣所製ゴールドグルデンは、貨幣学上の分類では「稀少(Rare / R)」とされます。
ただし、実際の取引では、以下の理由から「非常に稀少(Very Rare / RR)」と表記されることが多々あります。
・状態による格上げ:このタイプの金貨が「R(稀少)」とされるのは発行タイプとしての分類ですが、今回のようにAU-55(準未使用)という高い保存状態を保っている個体は、市場に現れる頻度が極めて低いため、オークション資料などでは「VERY RARE(非常に稀少)」と強調して記載されます。
・特定の年次や細部:同じナジセベン製でも、特定の年号が刻印されたもの(例:1513年銘など)は、明確に「RR(非常に稀少)」と分類されることがあります。
結論として、カタログ上の基本区分は「R(稀少)」ですが、この個体のような優れた品質と来歴(ジョン・P・バーナム・コレクション)を持つものは、コレクターや専門家の間では実質的に「RR(非常に稀少)」の価値があるものとして扱われています。
基準価格
Gold Coins of the Worldでは
VF 1,200ドル
EF 2,500ドル
1.ハンガリーにおけるヤギェウォ朝の成立とウラースロー2世の統治
1490年、ハンガリーの偉大な「正義王」マーチャーシュ1世が後継者を残さずに没したことで、中央ヨーロッパの権力構造は劇的な変化を余儀なくされた。
マーチャーシュが築き上げた強力な中央集権国家と、オスマン帝国の侵攻を食い止めていた精鋭部隊「黒軍(Fekete Sereg)」の維持は、後継者に課された最大の難題であった 。
この権力の空白を埋めるべく選出されたのが、ボヘミア王でもあったヤギェウォ家のウラースロー2世(ウラジスラフ・ヤギェウォ)である。
ウラースロー2世の選出は、マーチャーシュによる強力な統治を嫌い、貴族の特権回復を望んだハンガリー議会(エステート)の意向が強く反映されていた。
【ナジセベン(シビウ)造幣所の歴史的役割と「h」マークの意義】
ナジセベンは、中世ハンガリー王国においてトランシルヴァニア・ザクセン人の中心都市として栄え、王国東部の経済的拠点を形成していた。
この都市の造幣所が発行する貨幣には、都市名の頭文字である「h」(Hermannstadt)のミントマークが刻印された。
貨幣鋳造権は本来、国王の排他的特権であったが、ウラースロー2世の時代、国王は防衛資金や政治的便宜と引き換えに、有力貴族や有力都市に鋳造権の一部を譲渡、あるいは請け負わせることが常態化していた。
例えば、ジギスムント王の時代には、オスマン帝国への対抗策としてテウト騎士団にナジセベンの税収や鋳造利益を譲渡した記録があり、この伝統は後世の統治者にも引き継がれた。
ナジセベン造幣所の運営は、「カマラ・イシュパーン(Comes Camarae:室長)」と呼ばれる官吏によって管理されていた。
ウラースロー2世期、この地位にあった人物や造幣所の実務を担った彫金師たちは、マーチャーシュ期の高い技術水準を維持しつつ、独自の図像的特徴を発展させた。
今回分析対象となっているゴールドグルデンに見られる、聖ラースロー像の腋の下に見える剣の柄の描写は、ナジセベンおよびナジバーニャ造幣所に特有のスタイルであると指摘されている。
1490-1516年発行(ナジセベン(シビウ)造幣所)
発行枚数:1,058枚
PCGS社鑑定済み1枚、AU55は1枚でトップグレードです。
重量:3.59グラム
直径:21.0ミリ
品位:98.6%金
本貨は、その 3.59g の小さな体躯の中に、15世紀のハンガリーが抱えていた希望と苦悩、そしてトランシルヴァニアの職人たちの誇りを凝縮しています。
ナジセベンの地で力強く打ち込まれたその意匠は、500年の時を超えて、琥珀色の輝きと共に現代に蘇りました。
この貨幣を所有することは、単なる趣味の領域を超え、ヤギェウォ朝という中欧の巨大な十字路に立ち、オスマン帝国の嵐を前にして静かに輝いていた黄金の時代を追体験することに他なりません。



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