【レア度1 R1】アンティークコイン イギリス 1772年 ジョージ3世 1ギニー金貨 NGC-MS62
1772年発行(ロンドン王立造幣局)
発行枚数:不明
NGC社鑑定済み16枚、MS62は3枚でトップ2グレードです。
重量:8.35グラム
直径:24.0ミリ
品位:91.67%金
Maurice Bullの著書『English Gold Coinage』(EGC)において、1772年ギニー金貨はカタログ番号 683 として分類されています。
同書におけるこのコインのレア度(Rarity)は R(Rare / 希少)と評価されています。
『English Gold Coinage』は、1649年から1816年までの英国金貨を網羅した権威ある専門書であり、そこで「R」評価を受けていることは、この1772年銘が貨幣学の観点から非常に高い希少価値を認められていることを意味します。
表面:ジョージ3世の第3肖像

1772年のグリーニー金貨は、貨幣学的な分類において「第3肖像(Third Head)」あるいは「第3ローリエット・バスト」と呼ばれるタイプに属する。
この意匠は1765年から1773年まで採用されたもので、若きジョージ3世の威厳をネオクラシック様式で描いている。
表面には、右を向いた月桂冠を戴くジョージ3世の肖像が配されている。
この「ローリエット(Laureate)」という表現は、古代ローマの皇帝を彷彿とさせ、啓蒙主義時代における大英帝国の野心と主権を象徴している。
周囲にはラテン語で「GEORGIVS • III – DEI • GRATIA •(神の恩寵によるジョージ3世)」という銘文が刻まれており、王権神授説の残滓と国家の安定を表現している。
この彫刻を担当したのは、当時王立造幣局の主席彫刻師を務めていたトーマス・ピンゴ(Thomas Pingo)あるいはその一族である。
彼らのスタイルは、前代のジョージ2世時代と比較して、より写実的でありながらも、王族としての超越的な気品を損なわない繊細なラインが特徴である。
MS62の鑑定個体に見られる「テリフィックにフラッシーな表面(Terrifically flashy surfaces)」は、プレス機が金板を叩いた瞬間の金属流動が生み出す「ミント・ラスター」が、250年以上の時を経てなお鮮明に残っていることを意味する。

裏面:豪華な王冠を戴く4分割の紋章の盾

裏面には、豪華な王冠を戴く4分割の紋章の盾(Crowned quartered shield of arms)が配されている。
この盾の各区分は、ジョージ3世が主張していた多面的な主権を象徴している。
・第1区分(左上):イングランドとスコットランドの連結紋章。
1707年の合同法以来、グレートブリテン王国の基幹を成すシンボルである。
・第2区分(右上):フランスの百合紋章(Fleurs-de-lis)。
当時、英国王は形式的にフランス王位の継承権を主張し続けていた(これは1801年まで続く)。
・第3区分(左下):アイルランドの竪琴。
・第4区分(右下):ハノーヴァー選帝侯領の紋章。
ブラウンシュヴァイク、リューネブルク、ザクセンの象徴を含み、中央には神聖ローマ帝国大財務官の象徴であるシャルルマーニュの冠が描かれている。
裏面の銘文は極めて複雑な略称で構成されている。M • B • F • ET • H • REX • F • D • B • ET • L • D • S • R • I • A • T • ET • E • という銘をフルスペルに展開すると、ジョージ3世が単なるグレートブリテンの王ではなく、ハノーヴァー選帝侯としての地位も保持していたことが明確になる。
この銘文の「Fidei Defensor(信仰の擁護者)」という称号は、ヘンリー8世以来の英国君主の重要なアイデンティティであった。
基準価格
Gold Coins of the World(10th edittion)では
VF:975ドル
EF/UNC:2,000ドル
CH UNC:8,500ドル
Coins of Englandでは
TB:525ポンド
TTB:850ポンド
SUP:2,300ポンド
1.1772年のギニー金貨貨幣学的仕様と物理的特性
1772年のギニー金貨は、ジョージ3世の治世初期における標準的な発行物であり、その仕様は王立造幣局が定める厳格な基準に準拠していた。
この時期の英国の貨幣鋳造技術は、伝統的なハンマー打ちから機械によるミル打ち(Milled Coinage)へと完全に移行しており、その精度は国際貿易における信頼の礎となっていた。
2.鋳造エラーと個体差の分析
18世紀の機械鋳造は、現代ほど完璧ではなかった。
時として、プランシェットのわずかな歪みや、ダイスの摩耗による「ストライキング・ソフトネス(刻印の甘さ)」が見られることがある。
しかし、本個体は「グッド・ストライク(強い打刻)」と評価されており、デザインの中心から周辺に至るまで均一に刻印が施されている。
これは、造幣局内でダイスがまだ新しかった時期に鋳造されたことを示唆している。
また、「ヘイマーク(Haymarking)」と呼ばれる、地金に含まれる不純物による微細な線が現れることもあるが、高グレード品においてはこれらが最小限に抑えられている。
表面に見られる「輝き」は、こうした冶金学的な清浄さと、鋳造時の物理的なエネルギーの完璧な調和の結果である。
1772年発行(ロンドン王立造幣局)
発行枚数:不明
NGC社鑑定済み16枚、MS62は3枚でトップ2グレードです。
重量:8.35グラム
直径:24.0ミリ
品位:91.67%金
本貨は、貨幣学、芸術学、そして経済史の三位一体が生み出した稀有な文化遺産です。
それはアメリカ独立戦争前夜の帝国の安定と、その裏に潜んでいた深刻な信用危機の双方を体現しています。
物理的には、8.35グラムの22カラットゴールドという価値を持ちながら、芸術的にはPingos一族による英国ネオクラシック様式の最高傑作の一つとしての顔を持ちます。
現代のコレクターや投資家にとって、この金貨を所有することは、大英帝国が最も誇り高く、かつ最も不安定であった時代の断片を所有することと同義です。
Seldom available in meaningfully finer condition(これ以上の状態で入手できる機会は極めて稀である)という評価は、この個体が持つ物理的・歴史的価値の双方に対する、現代の貨幣市場からの最大限の敬意の表れです。
フラッシーな表面に映し出される250年前の輝きは、帝国の黄金時代が放った最後の眩い閃光として、今後も永遠に語り継がれるでしょう。



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