アンティークコイン オーストリア ハプスブルク帝国 1909年 フランツ・ヨーゼフ1世 100コロナ金貨 PCGS-MS61PL
1909年発行(ウィーン造幣局)
発行枚数:3,203枚
PCGS社鑑定済み1枚、MS61は1枚でトップグレードです。
重量:33.8753グラム
直径:37.0ミリ
品位:90.0%金
表面:皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の肖像

表面には、右を向いた皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の「無冠」の肖像が描かれている。
1908年のジュビリー貨では月桂冠を戴いた姿であったが、通常貨ではより人間的かつ威厳のある老境の皇帝の姿が採用された。
周囲のラテン語銘文「FRANC·IOS·I·D·G·IMP·AVSTR·REX BOH·GAL·ILL·ETC·ET AP·REX HUNG·」は、「神の恩寵によるオーストリア皇帝、ボヘミア、ガリシア、イリュリア等の王、およびハンガリーの使徒王、フランツ・ヨゼフ1世」を意味し、多民族を統べるハプスブルク君主の広大な称号を網羅している。
シュワルツの描写は、皇帝の象徴的な「マトンチョップ」と呼ばれる頬髭と、深く刻まれた皺に至るまで緻密に表現されており、当時のウィーンにおける写実主義彫刻の極致を示している。

裏面:帝国の象徴「双頭の鷲」
裏面には、ハプスブルク帝国の紋章である「双頭の鷲」が中央に配されている。
鷲は右足に剣を、左足に宝珠(オーブ)を持ち、胸にはハプスブルク=ロートリンゲン家の紋章盾を掲げている。
鷲の頭上にはルドルフ2世の帝冠が浮かび、その周囲に額面「100 CORONA」と発行年「1909」が配置されている。
この鷲の細かな羽毛の表現や、盾の紋章の精緻さは、大型金貨ならではの視覚的インパクトを与えている。
本貨の側面(エッジ)には、レタリングによる碑文が施されている。
その内容は「VNITIS VIRIBVS」であり、これはフランツ・ヨゼフ1世の個人的なモットーである「力を合わせて(With United Forces)」を意味する。
この文字は、鋳造時に3分割されたカラー(金枠)を用いて圧印される特殊な技法で刻まれており、偽造防止と装飾性を兼ね備えている。
基準価格
Gold Coins of the Worldでは
VF 2,000ドル
EF 4,500ドル
1.1909年銘100コロナの貨幣学的地位
1909年のオーストリア100コロナ金貨は、3,203枚という極めて少ない発行枚数により、当初から収集家の注目を集める対象であった。
この発行数は、後の1911年銘(11,165枚)と比較しても著しく少なく、帝政末期の金貨発行が如何に厳選されたものであったかを物語っている。
PCGS MS-61 Prooflikeという評価は、単なる保存状態の良さだけではなく、打刻の瞬間にダイ(極印)が極めて新鮮な状態で、かつ入念に研磨されていたことを示唆している。
大型の金貨、特に直径37mm、重量約33.88gに及ぶ本貨のような個体において、鏡面仕上げの平地(フィールド)と鋭い光沢を維持することは技術的に困難であり、その「プルーフライク」の呼称は、希少性をさらに高める要素となっている。
2.ハプスブルク帝国の通貨改革と金本位制
1892年、オーストリア=ハンガリー帝国はそれまでの銀本位制であるフロリン(グルデン)体制を脱却し、国際的な商業基準に適合するために金本位制を採用し、新たな通貨単位「クローネ(コロナ)」を導入した。
この改革は、大英帝国やドイツ帝国といった当時の経済大国との貿易を円滑にし、帝国の経済的安定を担保するための戦略的な決断であった。
【通過制度の移行と100コロナの誕生】
1892年の導入当初、金貨は10コロナと20コロナの2種類が発行されたが、最大単位である100コロナは1908年まで発行されなかった。
1908年はフランツ・ヨゼフ1世の即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)にあたり、この祝賀行事の一環として「雲上の女神」として知られる記念100コロナ金貨が初めて打刻された。
翌1909年、造幣局は記念貨の意匠を通常貨の意匠へと戻し、帝国鷲を配した100コロナの定常発行を開始した。
1909年銘は、この通常意匠による100コロナ金貨の最初の本格的な発行年の一つであり、帝国の威信を象徴する高額面通貨としての役割を担っていた。
しかし、これらの金貨は日常的な決済手段というよりも、中央銀行の準備金や国際的な決済、あるいは富裕層による資産保蔵の手段として用いられることが一般的であった。
1909年発行(ウィーン造幣局)
発行枚数:3,203枚
PCGS社鑑定済み1枚、MS61は1枚でトップグレードです。
重量:33.8753グラム
直径:37.0ミリ
品位:90.0%金
本貨は、ハプスブルク帝国の黄昏時における卓越した造幣技術と芸術性の結晶です。
3,203枚という極少の発行枚数は、それが単なる地金ではなく、選ばれた者のみが手にすることのできる歴史の断片であることを示しています。
シュテファン・シュワルツによる皇帝の緻密な肖像、鏡面仕上げがもたらす荘厳な輝き、そして「ウィスピー」な表面の状態が語る100年以上の歳月の重みは、本貨を単なるコレクションの域を超えた、一種の芸術品へと昇華させています。
市場におけるその堅調なパフォーマンスと、プルーフライク個体の圧倒的な「 elusiveness(捉えどころのなさ、希少性)」を考慮すれば、本貨は将来にわたって世界中のコレクターから切望され続けるでしょう。
1909年銘100コロナ金貨は、地金型金貨の実利性と、アンティーク・コインの神秘性を同時に享受できる稀有な存在であり、その保有はハプスブルク帝国の栄華を現代に受け継ぐことに他なりません。



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